30才以上の80~90%が罹患していると言われる歯周病。 実はお口の中の健康のみならず、全身の健康にも関わっていることがわかっています。お口の中には約500種類の細菌がいますが、その中でも歯周病により歯ぐきで増殖した歯周病菌は、血液を通して全身に運ばれさまざまな全身疾患に影響を及ぼします。特に最近の研究で、心筋梗塞、糖尿病、がんのリスクを2~4倍高めることがわかってきています。歯周病は歯だけにとどまらず、命さえもおびやかすといわれるのはそのためです。
口はものを食べる最初の入り口であり、歯はものを噛み砕いたりすりつぶしたりする器官です。よく噛めずにいると内臓を悪くし体にもよくありません。また噛むことは脳を刺激し、記憶力や認知力にも影響を及ぼしますし、人が生きるための力を与えてくれます。さらに相手との意思の疎通を図る会話やその人自身の印象、笑顔にも関わってきます。歯がきれいかどうかで受ける印象はかなり違ってきますし、欧米では歯がきれいであることがステータスにさえなっています。きれいな歯は自分に自信を持て、性格さえも明るくします。体もお口もいつまでも健康で。
【歯周病の症状】
自覚症状がなかなか出ないのが歯周病。自分の知らない間に病気が進んでしまうため『静かなる病気』(Silent Disease)と言われています。歯周病の症状が出始めるのは40~
50代以降が多いのですが、実際には30代からすでに歯周病は静かに進行しています。そして歯の周りの骨がかなり溶けた頃に初めて「痛くて噛めない」「歯ぐきが腫れた」という状態になります。
【歯周病とは?】
歯を支えている骨が溶けていく病気です。しかしながら、しわが増えたり、髪がうすくなったりという加齢変化ではありません。年をとったら歯はなくなるものではなく、年をとっても歯を失くさないよう治療、維持していくことが可能な病気なのです。
【歯周病の原因は?】 プラーク(=歯垢(しこう))中の歯周病菌
人の口の中には多くの細菌がいます。歯の表面に付いたプラークは食べかすではなく実はそれら細菌のかたまりで、その中には歯周病菌などが存在しています。
【歯周病治療とは?】
歯と歯の間、歯と歯ぐきの境目についたプラークが歯周病の原因ですので、治療の第一歩はまず患者さんご自身の歯ブラシにより毎日このプラークを取ることから始めます。
ポイントは歯周病を治していくためのブラッシングです。特に中等度~重度歯周病の方は、磨き方を細かく教わる以前にまずは長く磨くこと。次に長磨きを定着させつつ、ご自分の歯磨きを正しい磨き方に変えていくこと。同じ時間磨くのであれば、より効率よくプラークを取れたほうがいいに決まっています!また磨いていることと磨けていることは全く違います。
そして歯ブラシだけで歯ぐきの状態が少し良くなってきた頃を見計らい、歯ブラシでは届かない深い歯周ポケット内の歯石、プラークを、1本ずつ丁寧にこちらでお取りしていきます。ここがまずは歯科医院の腕の見せ所。
同じような処置を行っても技術がないと一向に治りません。レーザー治療や歯周内科(薬)、殺菌水のようなものはすべて、この歯ぐきの上と下のプラークコントロールを徹底した上での補助療法に過ぎません。どの歯科医院(歯科医)を選ぶかによって、歯の運命は大きく変わります。プラークコントロールを徹底することができれば、あとは自然治癒力により改善していきます(治療例7→)。
但し、歯周ポケットが6~8mm以上と重度の歯周病にかかっている歯の場合、深い歯周ポケットの中をすべてきれいにすることは、①歯ぐきが邪魔して難しい②根の形が複雑で難しい③うまく取れているかどうか目で確認することができず、あくまで術者の感覚によるしかないなどの理由で、困難な場合があります。その場合歯ぐきを少し開け、目で直接見て処置を行う(歯周外科処置)こともあります。また歯周外科処置の利点として、いびつな骨を整えたり歯周ポケットを浅くしてプラークコントロールをしやすくしたり、再生療法という骨を積極的に再生したり、歯と歯ぐきの付着をより強固にする処置を行うこともできます(治療例2→)。
とは申しましても、すでに溶けてしまった骨は元に戻るわけではありません。これ以上骨が溶けていかないよう、健康な歯周組織に回復させるのが歯周病治療の基本です。30才くらいから徐々に進行してきた歯周病。確実な処置をしても、良くなるまでには期間が必要です。重症な歯周病治療は1年以上かかることもありますが、そのかわり5年先、10年先、ご自分の歯はその後のメインテナンスを継続することで確実に残っていくことを保証します。歯周病治療に精通した歯科医院を選ぶことができたら、あとはご自身のブラッシングとメインテナンスの継続次第です。