医療法人社団慈昂会

平成25年2月に、慢性胃炎に対する胃がん予防目的の除菌が保険適応になりました。

それに伴い、このページの一部改定を行いました。ピロリ菌の除菌については、保険診療・自費診療ともに、下記の2施設にお気軽にお問い合わせ下さい。

福住内科クリニック   011-836-3531

琴似駅前内科クリニック 011-622-3531

ピロリ菌専門外来
ピロリ菌についての重要事項(まとめ)

1. 日本人の約半数(約6000万人)がピロリ菌に感染している。
2. ピロリ菌は胃がんを発生させる「明らかな発がん物質」である。
3. ピロリ菌感染者は全員、除菌治療すべきである。
4. なるべく若いうちに除菌した方が、胃がん予防効果が高い。
5. 保険適応で除菌できる疾患に慢性胃炎が追加されました。

・慢性胃炎
・消化性潰瘍(胃潰瘍、十二指腸潰瘍)
・早期胃がん術後胃
・特発性血小板減少性紫斑病
・マルトリンパ腫

6. ピロリ菌感染者全員が保険適応で除菌することが出来きます。

7. ピロリ菌除菌を保険診療でするための条件

保険診療で除菌するためには、上部内視鏡検査を行い「ピロリ菌感染による慢性萎縮性胃炎があること」、「胃がんがないこと」の2点を確認する必要があります。内視鏡検査暦のない方は保険診療での除菌は出来ません。したがって、当法人では内視鏡検査なしでの除菌を希望される方のために保険適応外(自費診療)による除菌治療も継続いたします。
ピロリ菌除菌の目的は、ただひとつ「胃がん予防」です。

ピロリ菌専門外来の概要

 ピロリ菌と胃がん予防に関しての医療記事をご紹介します。

 ・「ピロリ菌と胃がん予防」 2010年8月16日道新夕刊健康アドバイスに掲載
 ・「ピロリ菌と胃がん予防その2」  2011年5月16日道新夕刊健康アドバイスに掲載
 ・「ピロリ菌除菌にも公費助成を」 2012年6月18日道新夕刊健康アドバイスに掲載

※上記3編の著者:福住内科クリニック 院長 田中 浩

 ・「市民の方へのピロリ菌解説」  日本ヘリコバクター学会が作成
ぜひともご一読下さい。

ペプシノーゲン+ピロリ菌抗体」同事測定法(採血)

  A群 B群 C群 D群
ピロリ菌抗体
陰性
陽性
陽性
陰性
ペプシノーゲン
陰性
陰性
陽性
陽性

・A群:胃粘膜の萎縮性変化がなく、胃がんの発生はほとんどない。
・B群:胃粘膜の萎縮性変化が乏しく、胃がんの発生は少ない。
・C群:胃粘膜の萎縮があり、胃がん発生の危険性が高い。
・D群:胃粘膜の萎縮が強く腸上皮化生を伴い、胃がん発生の危険性が最も高い。

頻度はおよそ以下の如くです。

A群 21%、 B群 50%、 C群 28%、 D群 1%

※D群は、ピロリ菌感染が長期間続き、胃粘膜が腸上皮化生に置き換わってしまったため、ピロリ菌も生息することができなくなり、見かけ上抗体が陰性となるものです。
頻度は少ないですが、胃がんになる危険度の最も高い群になります。

ピロリ菌除菌にかかる費用(自費診療の場合)

 費用は、5,400円~22,059円(税込)程度になります。
 このほかに保険診療で行う内視鏡検査代金が発生する場合があります。

 除菌が不成功に終わった方には2次除菌を行いますが、当院では2次除菌は、1次除菌終了後、6ヶ月程度の間隔をおいてから実施しております。

ピロリ菌除菌が終わるまでの期間

 「検査(採血)→除菌薬内服→結果判明」まで、最短コースでも約7週間かかり、この期間に最低3回の来院が必要です。薬代も含めた費用の総計は、およそ22,000円になります。

 C群、D群の胃がんハイリスクの方は内視鏡検査(保険診療)が必要になる場合がありますので、さらなる時間と費用がかかります。

ピロリ菌関連項目の解説

ピロリ菌の除菌方法   [保険診療の場合:胃潰瘍など]

保険診療のため、薬の処方の仕方がすべて国により決められています。  まず専用の薬3種類を1週間飲み続けます(製品名はランサップです)。これを1次除菌と呼びます。1次除菌に失敗した場合は、薬の内容を一部変更して(製品名はランピオンです)、2次除菌を行います。2次除菌も薬3種類を1週間飲み続けます。1次除菌、2次除菌ともに薬の飲み忘れがあると除菌成功率が下がってしまいますので、必ずきちんとすべての薬を内服することが肝要です。

 なお、1次除菌中の飲み食べには特に制限はありませんが、2次除菌中のアルコール類は禁止です。

ピロリ菌の除菌方法  [自費診療の場合:胃がん予防]

当院では、上記の1次除菌と2次除菌薬の順番を変えて、最初にランピオンを1週間処方しています。これで除菌に失敗した場合はランサップを1週間内服することになります。これにより、下記に書いてある除菌成功率を大幅にUPさせることができます。ランピオン内服中のアルコール類は禁止です。

ピロリ菌除菌療法の成功率   [保険診療の場合:胃潰瘍など]

 抗生剤の耐性菌の出現頻度により、地域格差があるようですが、おおよそ1次除菌の成功率は80%前後2次除菌まで行うと97%程度の成功率があります(耐性菌の出現により、1次除菌の成功率は徐々に下がりつつあるようです)。除菌療法を2回行っても、成功率は100%にはならないことにご注意下さい。2次除菌も不成功に終わった方は3次除菌が必要になります。3次除菌は、方法がまだ確立していない部分もあり、当院では施行しておりません。大学病院などの専門施設をご紹介しております。ご了承下さい。

ピロリ菌除菌療法の成功率【自費診療の場合:胃がん予防】

薬の順番を変えることにより、1次除菌ランピオン)の成功率は大幅に上昇して95%になります。これで失敗した場合は2次除菌(ランサップ)を行いますが、97%程度の成功率になります。2次除菌終了時点での成功率は、保険診療の場合とほぼ同じになりますが、ランピオンを最初に使用することにより、ほとんどの人が1回の除菌で成功することになります。
※保険診療で除菌する場合は、このように順番を変えてランピオンを最初に使用することはできませんので、ご了承下さい。

ピロリ菌除菌の副作用

 主な副作用としては、腹痛・下痢などの胃腸障害(10-30%)味覚異常(5-15%)、皮疹などの皮膚異常がありますが、程度の軽いものであれば、そのまま内服を続けて下さい。途中で内服を止めると、除菌が上手くいかなくなります。まれに下血を伴うひどい下痢ひどい皮膚異常を引き起こすことありますが、その場合は内服を中止してすぐに来院して下さい。

薬剤アレルギー歴、現在内服中の薬剤

 

 ペニシリンアレルギーと言われたことのある方は、必ず申告して下さい。  
他に内服中の薬がある場合は、「お薬手帳」などの薬の一覧表を持参して下さい。

検査法の説明

・ピロリ菌抗体検査(採血)
 抗ピロリ菌抗体は、血液、尿などを用いて測定可能です。当院の専門外来で用いる方法は、大原則として血液(採血)とします。採血後4~5日で結果が出ます。ただし除菌成功後も、抗体が陰性化するまで1年以上かかるため、除菌が成功したか否かを調べる方法としては不適です。

・ペプシノーゲン検査(採血)
 ペプシノーゲンとは、胃粘膜から分泌されるペプシンの前駆物質で、血清中に含まれており、胃酸の働きによってタンパク質を分解する酵素ペプシンになり、ペプシノーゲンⅠとⅡに分類されます。PGⅠ値≦70ngかつPGⅠ/Ⅱ比≦3を陽性とします。採血後約1週間で結果が出ます。胃粘膜の萎縮の程度を示す数値で、慢性萎縮性胃炎があると陽性になり、胃がんになるリスクを的確に判断することができます。決して、胃癌が直接分かる血液検査ではありませんので、誤解のないようにお願いします。

・尿素呼気試験(水薬を内服してから呼気を採取)
 水薬(C尿素)を飲み、呼気中の二酸化炭素を同位元素分析することにより、胃内のピロリ菌の有無を調べる方法です。胃全体のピロリ菌の分布を捉えられる方法で、ピロリ菌の診断に最も有用な検査です。特に除菌が成功したか否かを調べる方法としては最も精密な検査方法です。ただし、除菌後の判定をする場合は、除菌後1ヶ月以上経過してから行う必要があります。除菌直後に判定すると、ピロリ菌が残存(除菌失敗)しているのに除菌成功と判定される場合が多いからです。これを擬陰性と言います。擬陰性を避けるためには、抗生剤やプロトポンプインヒビターを飲まない期間を1ヶ月以上設けることが大切です。

重要事項(まとめ)の解説

1.日本人の約半数(約6000万人)がピロリ菌に感染している。

 ピロリ菌は胃酸分泌力の弱い幼少期に感染しやすく、大人になってから新たに持続感染することはほとんどありません。感染経路としては第一に汚染された水が考えられており、上下水道設備の整っていなかった時代に幼少期を過ごした年代ほど感染率が高くなっています。日本では60歳未満の感染率は比較的低いのですが、60歳以上の団塊の世代をふくむ大集団の感染率は70%以上(およそ80%)と高くなっています。

2010年の年齢 ピロリ菌感染率
30歳まで
約20%
40歳
約25%
50歳
約50%
60歳
約75%
70歳以上
約80%

2.ピロリ菌は胃がんを発生させる「明らかな発がん物質」である。

 1994年に国際保健機関(WHO)の下部機関である国際がん研究機関(IARC)によりピロリ菌は「明らかな発がん物質」であると認定されました。喫煙と肺がん、B型・C型肝炎ウィルスと肝がん、ヒトパピローマウィルスと子宮頚がん、と同様の評価が下されました。

ピロリ菌感染→胃粘膜の萎縮(慢性萎縮性胃炎)→腸上皮化生→胃がん

 ピロリ菌に感染すると全員が必ず(100%)慢性萎縮性胃炎になり、これを長期間放置すると、胃がん発生のリスクが高くなることが証明されています。 逆に言うと、ほとんどの慢性萎縮性胃炎や腸上皮化生の原因はピロリ菌感染によるもので、ピロリ菌感染がなければ慢性萎縮性胃炎にならないし、分化型胃がんも発生しない、と言えます。

3.ピロリ菌感染者は全員除菌治療すべきである。

 ピロリ菌感染者の0.5%が毎年胃がんを発症、つまり10年間で20人に1人の割合で胃がんを発症しますが、ピロリ菌を予防的に除菌すれば、胃がんの発症が約3分の1に減少することが分かり、2009年1月に日本ヘリコバクター学会ガイドラインとして発表しました。

4.なるべく若いうちに除菌する方が、胃がん予防効果が高い。

除菌をした時の年齢 胃がん発生を予防可能な割合
40歳未満
ほぼ100%
ほぼ100%
50歳未満
93%
98%
60歳未満
76%
92%
70歳未満
50%
84%
70歳以上
45%
73%

・除菌による胃がん予防効果は、男性よりも女性の方が高い。  
・40歳になるまでに除菌すると胃がんの予防効果は、ほぼ100%。
・50歳になるまでに除菌すると胃がんの予防効果は、90%以上。
・70歳を過ぎてからの除菌の予防効果は男性では特に50%未満と低くなっています。

5.保険適応で除菌できる疾患に慢性胃炎が追加されました。

大多数の消化性潰瘍(胃潰瘍、十二指腸潰瘍)の原因はピロリ菌感染によるものであり、除菌することによって潰瘍が治り、再発も抑えられることが知られており、2000年8月から保険適応になっています。
 さらに、除菌の有効性が高い疾患として、早期胃がん術後胃、胃Maltリンパ腫、特発性血小板減少性紫斑病の3疾患が2010年6月から保険適応になりました。が、これら4疾患に対する除菌治療のみでは、ピロリ菌感染者の4-5%のみが除菌できるに過ぎませんでした。
 ピロリ菌の持続感染が起きると必ず(100%)慢性萎縮性胃炎になります。従って、慢性萎縮性胃炎に対する除菌の保険適応が待ち望まれていたのですが、平成23年2月についに「慢性胃炎」に対する保険適応での除菌治療が認められました。

6.ピロリ菌感染者全員が保険適応で除菌することが出来ます。

 「慢性胃炎が保険適応されたこと」により事実上、ピロリ菌感染者全員(100%)が保険適応により除菌可能になりました。ピロリ菌撲滅時代の到来です。 ただし、保険診療でピロリ菌除菌を行うには条件があります。

7.保険診療でピロリ菌除菌をするための条件

・概ね半年以内に胃内視鏡検査暦があり、その結果「慢性胃炎」があることを証明できる写真や書類を持っていること、が必要です。健診時の内視鏡や他院で行われた内視鏡検査でも構いませんが、その証明となるモノは必要です。 ・2種類の除菌薬があるのですが、保険診療ではその使用順番が決められており、 ランサップ400(1次除菌)→ランピオン(2次除菌)の順に使わねばなりません。 以下、ピロリ菌の除菌方法 [保険診療の場合:胃潰瘍など]の記事をご参照下さい。 したがって、当法人では内視鏡検査なしでの除菌を希望される方のために保険適応外(自費診療)による除菌治療も継続いたします。ピロリ菌除菌の目的は、ただひとつ「胃がん予防」です。

文責 日本ヘリコバクター学会 ピロリ菌感染症認定医 田中 浩
(福住内科クリニック 院長)


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